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モンタナのカウボーイ 2012年 
以下の画像[10枚]はNBCNews.comに掲載されたものです。
【2012年11月 UP】
モンタナでは数十年前まで牧場が多い地域では牛追い(キャトルドライブ)の光景がよく見られたものだったが、 その大部分はトラック輸送に取って代わられている。 より安い牛肉を供給せよという市場の要求に応えるためだ。 トラックの方が移動コストも安上がりになるということだ。 しかし最近、牧場経営者(ランチャー)の中には(放牧地・牧草地で) 草を食べさせて育てるという昔のやり方に戻している者たちが出はじめている。 牛肉を生産するという行為が環境に及ぼす影響や 長い目で見た自分たちの暮らし方(生き方)というものについて深く考えるようになったためだ。

放牧地に牛たちが草を食んでいるというのは絵になるじゃないか。 そのあり様もバイソンのような野生の草食動物と同じようであればなおさらいいということだ。 肉食動物から身を守るために群となり、短い時間、一定の範囲の草を食べ、移動し、そこでまた草を食む。 こういう行動を繰り返すのだ。そうすれば、同じ場所での食い過ぎを防ぎ、放牧地全体の状態は健全に保たれる。

2012年6月、ルビー・デル・牧場(Ruby Dell Ranch)。 冬の放牧地からモンタナ南西部のセンテニアル・ヴァレー(Centennial Valley)にある夏の放牧地へと牛たちを移動しているところである。
雇われている者、友人、隣近所の者たちで冬の放牧地からルビー・ヴァレー(Ruby Valley)を通ってセンテニアル・ヴァレーにある 夏の放牧地まで96km(60マイル)を移動させているところ。 ルビー・デル・牧場のお隣さんはジェイ・バー・エル・牧場(the J Bar L Ranch)だ。 そのマネジャーである、ブライアン・ウーリング(Bryan Ulring)も、かれらのやり方を、環境に配慮したものであり、 経済的にも納得のいくものであり、社会のあり様としても健康的である、として支持している。

かれは言う。『It's a mouthful but .....反対もある。しかし、われわれは自然に則したやり方でやろうとしているのだ。』 『かつて、この地はバイソン、オオカミ、他の肉食動物で満ちていた。隣り合わせで暮らしていた。 そして、かれらは生き残り、子孫を残し続けている。』『かれら動物たちの生き方を真似て牛を飼おうとしているのだ。』 さらにかれは言った。『牛というものは”移動堆肥製造機”と言ってもいい。』 『かれらの蹄は植物の種を植え、かれらが尿をするということは、水の豊かな土地から乾燥地帯に水分を移動させることになる。 そして、かれらの糞は天然の肥料である。』
ジェイ・バー・エル・牧場。ヒラリー・アンダーソンは母を亡くした子牛にミルクを飲ませている。 そばを走り回って遊んでいるのは娘のエリー(Elle)だ。 アンダーソンの夫であるアンドリュー(Andrew)と従業員のウーリングが成牛の管理をし、 アンダーソンの主な仕事は放牧地の状態や牛たちの健康に注意し手当すること、 6月〜7月にかけては子牛の世話をすることである。 以前、イエローストン国立公園で働いたことがあるアンダーソンはオオカミの生態に詳しい生態学者であり、 牧場にとって脅威となる肉食動物の対処方法についても考える。

ウーリングは言う。『この牧場の基本的な考え方は”より手をかけることだ”と言える。 つまり、牛たちの様子を見ていられる時間が多くなるということだ。』 さらに言う。『たいていのランチャーは自分たちの土地をいたって上手に使っている。』 『われわれのやり方と普通のランチャーのやり方の違いは、われわれのやり方は高密度(狭い範囲にたくさんの牛)であるということだ。 その内容は、1エーカー(4046u,1226坪)当り、母牛と子牛のペアーが30−40組である。 そして、草の成長が速い時期には、毎日、放牧地を移動させている。従来方式の普通のランチャーのやり方は、 5エーカーあるいはそれ以上に対して成牛(Cow)あるいは子牛1頭であり、放牧地を移動させるのは月1度である。 このやり方だと草が成長するために十分な時間がなくなることになる。』
めそめそと泣いているのは、ジェイ・バー・エル・牧場の息子、アンディー・アンダーソン(Andy Anderson)、4歳だ。 父親のアンドリューが、母親を亡くした子牛のために、死んだ子牛の皮を剥ぐ準備をしているのを見ているからだ。 その皮を母親を亡くした子牛にかぶせて、死んだ子牛の母牛に、自分の子どもと思わせて、乳を飲まさせるためである。

牧場経営(ランチング)というのは骨の折れる仕事だ。モンタナのセンテニアル・ヴァレー界隈の牧場では、子牛が生まれる期間には 1日14〜16時間も働く。 アミ・ヴィタール(Ami Vitale)は言う。 『わたしが知り合いとなった人たちは、おどろくほど忍耐強く、献身的に働く。 そして、隣近所が助け合うのは毎日のことだ。わたし自身も隣近所として加わることがあるわけだが、 それは、ほんとに気持ちのよいものだ。』
下着のままゴム長靴を履いて夜中に外に出てきているのは、アンディー・アンダーソン(男の子)である。 両親であるアンドリューとヒラリーが、お産で苦しんでいる母牛を助けようとしている。 その両親のお手伝いをしようと出てきているのだ。
2012年8月。 ジェイ・バー・エル・牧場。雇われている者たちが若い牛(子牛)に焼印を押しているところ。 公の土地で牛を放牧して育てている西部地域(各州)においては焼印を押しておくことはたいへん重要である。 牛たちは勝手にあっちこっち移動してしまい、他の持ち主の牛の群れと混ざってしまうことがしばしばある。 その時、持ち主を識別するのに焼印は決定的に重要なのだ。

モンタナ・キャトルメン協会会長のマーク・ブーン(Mark Boone)は言う。 『ジンバブウェ人の生態学者であるアラン・セイヴァリー(Allan Savory)が、 より環境に配慮した(ある原理・原則に基づいた)方法を世に先駆けて提唱した。 ジェイ・バー・エル・牧場でも用いたものであるが、 その方法はモンタナのランチャーの間で確実に支持者を増やしていった。特に若い世代の間で支持が広まった。 かれらは大学教育を受けており、単位面積当たりの生産性を上げる方法を探していたのだ。』

第15牧場(the VX Ranch)のマネジャーであるブーン自身、セイヴァリーの本は読んでいた。 本を読んだかれの受け取り方はこうだ。 『ランチャーはそれぞれ自分のやり方(オペレーション)に合うものを取り入れるんだ。』 さらに言った。『(セイヴァリーの言う方法なんて)聞いたことがないし、実際、うまくいかなかったよ。』 しかし(天候など)自然状況がいつもとちがえば、ランチャーは、状況に合わせていろいろと変えねばならない。 かれが言うには『今年は降雨量が少なく、放牧プランを完全に変えねばならない。 一部の牛たちは州外に移動させねばならい。』
センテニアル・ヴァレーで毎年行われる春のキャトル・ドライブでの一コマ。一休みしているところ。 右に座っているのはバーブ・ピアソン。かの女の帽子をくわえて取り上げているのはかの女の馬だ。 ピアソンはルビー・デル・ランチのキャトル・ドライブの助っ人をしているのだ。 かの女はルビー・デル・ランチのオーナーである、ジムとアンダーソンの親友なのだ。
マーティネル・ランチ(Martinell Ranch)の牛たちが、北・センテニアル・ヴァレー・ルート(道)を北に移動しているところだ。 マーティネルとジェイ・バー・エルの両ランチは、季節ごとに、それぞれの放牧地を融通し合っている。

かつて、キャトル・ドライブは西部における重要な経済活動の1つであった。 おびただしい数の牛がカンサスに点在している(牛を積み込むための)鉄道の駅に向けて歩いて行ったのである。 そこから鉄道でシカゴや東部の各地(points east)にある家畜の一時置場(ストックヤード)に輸送されるのだ。 各牧場から鉄道の駅までは距離がある。牛を追う人(ライダー)にも牛自身にも、ところどころに、 休憩する場所(施設)が必要である。また鉄道の駅も増えていった。そして、西部という地域全体にカウ・タウン[Cow town] (牛によって栄えた町)が増えていったのだ。
ジェイ・バー・エル・ランチの牛は放牧地の草で育つ。それとは対照的にアメリカのほとんどのランチャーは フィードロット(飼育場)で牛を飼う。ウーリングは言う。 『ジェイ・バー・エルの2000頭の牛は飼育場へ入ることはない。また、このランチは放牧地で牛を育てているランチの中で 最も規模の大きなものの1つである。』

このヴァレー(センテニアル・ヴァレー)は、エルク、ムース、アンテロープ、鹿、クズリ、グリズリー(熊)、おおかみ、 何百種類もの鳥たち、かれらにとっても、大切な自然の通り道(回廊)なのだ。 このヴァレーの多くの部分が、一にぎりの大規模ランチャーによって所有されている。 ということは、かれらが自分の土地をいかに使うかということが環境に大きな影響を与えるということである。
キャトル・ドライブ(牛追い)の日々は長く続く。それでも、人は気分転換(リラックス)するための時間と場所を見つけだすものだ。 寒い夜、トレイラーの中に集まって、バイオリン、バンジョーを弾いて、楽しげにしているのはルビー・デル・ランチの人たちだ。
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