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オーストラリアン・ナチュラル・ホースマンシップ
馬に優しい馴致・調教法実演会

フォークナー氏のHP:Australian Natural Horsemanship

野生の馬たちは危険から身を守るために、リーダー馬を中心に安全で快適な環境を求める習性を
持っています。「ナチュラル・ホースマンシップ」はこの馬の持つ性質をたくみに利用し、調教する者
がリーダー馬にかわり、自然のうちに信頼関係を構築し無理なく馬を馴致・調教していく方法です。

(財)競馬国際交流協会(URL:http://www.jair.jrao.ne.jp/)の主催による講演会がありました。
電話:03-3503-8221 Fax:03-3503-8226 E-Mail:jair@jair.jrao.ne.jp

平成16年9月27日(月) 日本軽種馬協会 静内種馬場 研修所 覆馬場
平成16年9月29日(水) 美浦トレーニングセンター 乗馬センター
平成16年10月1日(金) 栗東トレーニングセンター 乗馬センター

この資料は上記(財)競馬国際交流協会ホームページ上でご覧になれますが、資料が競馬国際交流協会ホームページから削除された後もご覧いただけるように、当ページへの転載を許可していただきました。
講師:ケン・フォークナー(オーストラリア出身)
幼い頃から馬とともに生活し、15歳で競走馬の調教を始める。 28年余りの間に、競走馬の調教、ロデオ等のショーホースの調教および生産活動に従事する。 13年前にアメリカに渡り、人と馬との自然な信頼関係を構築するための理論「ナチュラル・ホースマンシップ」を学ぶ。 その後オーストラリアに戻り、インストラクターとしてこの理論に基づく調教を実践する傍ら、若駒に対する調教法や悪癖馬に対する対処法等を指導してきた。 数年前に、パートナーのキャシー・スチュアートとともに「オーストラリアン・ナチュラル・ホースマンシップ・スタディセンター」を設立。オーストラリアン・ナチュラル・ホースマンシップを普及させるために、オーストラリアをはじめ、世界各国からの研修生を受け入れている。



アシスタント:
エイドリアン・佐久間(ニュージーランド出身)
ニュージーランドおよびオーストラリアで見習騎手免許を取得。 騎手を引退後、フリーの攻馬手、調教師を経て、1990年、社台ファーム勤務、その後ノーザンファームにて厩舎長として勤務。この頃から、ナチュラル・ホースマンシップを学び始める。 1999年、北海道、早来町にて「サクセスフル・サラブレッド・マネジメント」(S.T.M)を設立。2002〜2003年、 ナチュラル・ホースマンシップのデモンストレーションを実施。2003年、社名を「パイオニア・ファーム」と改め、ナチュラル・ホースマンシップの理論に基づいた馬の育成事業に励む。





司馬撮影(2004/9/29)
美浦トレーニングセンターにて。
Mr. Faulkner & Mr. Mochida

持田さんD-Jランチのボスで講演会の通訳でもある。写真は講演会が始まったところ。一通り講義が終わり、向こうに写っている馬が馬場に入り実演が始まった。馬は8歳のセン馬で競走馬としての調教しか受けていない。馬場に入り、 ケンに引き渡されると、彼はすぐに立ち上がり自己主張を始めたが、ケンはいたって平静。馬はすぐにくるくると回されだし2時間の実演の始まり。午後3時〜:曇天ながら降られずよかった。


D-Jランチ(ディー・バー・ジェイ・ランチ)
北海道帯広郊外。ウエスタンスタイルの牧場ですが、ナチュラルホースマンシップをベースとした、 障害馬や競走馬のトレーニングも行っております。 D-Jランチについては、乗馬への道に紹介記事があります。 Vol.20に『D-J ホースフェスティバル』 Vol.21に『乗馬クラブ探訪』 執筆者は瀬波さん
馬への近づき方

もともと、馬は獲物(prey animals)であり、人間は肉食動物(predators)という関係にあるので、人間が馬に接する場合に、最初にどのようにして近づくかは、人と馬とのコミュニケーションを形成する上で大きな影響を与えます。 馬をおどかすように威圧したり、逆に、おそるおそる近づいたり、優しく接し過ぎて馬に、「人間よりも自分の方が偉いのだ」と感じさせてはいけません。 全くの新馬(unhandled horse)であろうと毎日乗っている馬であろうと、最初の馬への接触(contact)には細心の注意を払わなければなりません。 馬がお互いに顔をあわせた時、鼻を伸ばして触れあい(extend one's noses to touch)、匂いを嗅ぎあう(give a sniff)ことをご存知だと思いますが、それは人間の握手(handshake)のようなものです。

私たち人間は、馬の行動を真似することにより、馬とのコミュニケーションの方法を学び、馬と人とがより良く理解できるようになるのです。 馬に向かって真っ直ぐに近づいていく(striding directly at the horse)のではなく、むしろ、安全であることを確信(confident wander)させるような間接的な方法(approaching a horse in an indirect manner)により馬に近づいて、

まず匂いを嗅がせるために手の甲を差し出す (extending the back of the hand for the horse to sniff) ことで、あなたが馬流の正しい挨拶の方法を知っていることを伝えましょう。 掌を下に向けて、手を伸ばし馬の鼻のすぐ近くで止めると(extend your hand , palm down and stop just short of the horse's nose)馬はあなたの手に鼻を近づけて触れ、匂いを嗅ぎます(reach out and touch and sniff your hand)。あなたの方からの、この礼儀正しい挨拶で一日が始まるのです。




馬は「心地よいこと」に反応する

馬にとっては、何が「心地よいこと(comfort)」なのでしょうか? 新馬を取扱う時には、馬が全く挨拶をしたがらないことがあります。馬の目には、あなたが肉食動物で自分の敵として映っているのかもしれません。 私たちは、馬が「心地よいこと」を求めることを知っているので、馬にとって「心地よい(comfortable)」状況と「心地よくない(uncomfortable)」状況の両方を用意して、馬に「心地よい」状況を選択させるようにします。

馬があなたから逃げようとする時には(the horse is turning away from you)、あなたの肢を平手で叩いたり(slap your leg)、無口頭絡を揺り動かしたり(shake the halter)、あるいは、ロープを地面に叩きつけたりして(slap a rope on the ground))、馬にとって心地よくない状況を作り出します。

馬が「あなたを認識(recognition)するような仕草」を見せた瞬間、直ちに、馬にとって不快な動作を止めて、馬にとっては心地よい、リラックスした状態で立つように心がけなければなりません。 この反覆によって、馬は特定の反応を示すことにより、あなたの不快な動作を止めさせリラックスした状況になることを学び、馬にとって「心地よい」状態をもたらすことができることを学習します。 「あなたを認識するような仕草」とは、頭を下げる(lowering of the head)、唇を舐める(licking of the lips)、あなたの方を向き注意を向ける(turning to look at you)ことなどの行動を意味します。

この方法で徐々にあなたの方を向かせ(having the horse turn to face you)、あなたの所へ来させ(coming into you)、そして、アット・リバティ、即ち、何の馬装具も着けない自由な状態でも、あなたに付いて来させる(following you at liberty)ようにすることができます。 この過程では、タイミング(timing)が非常に重要で、間違ったタイミングで行えばあなたが望むのと正反対の結果を生み出してしまうので、最初に調教を行なう場合には、この技術に慣れた指導者と一緒に行うべきです。

何の馬装具も着けない状態(アット・リバティ)で馬を調教する。

指示に従う(yielding to a suggestion)

馬がアット・リバティな状態で、あなたの方を向き、後について来ることを学んだ後、手で馬の全身を撫でることにより、あなたが馬にとって安全で友好的な存在であることを理解させます。 もし、馬が特定の部位を撫でられることを嫌がるのであれば、それに慣れるまで優しく前進と後退(approach and retreat)の方法で、何度でも辛抱強く最初から繰返します。 そして、あなたはアット・リバティな状態でも、馬と意思疎通ができるようになり、指示に従う(yielding to a suggestion)よう馬に要求できるようになります。

前駆を動かすためには、馬の側面に立ち、あなたのヘソが馬の目に向くように立ちます。背中を真直ぐに立て(stand straight and tall)、身体に力を漲らせ(with energy in your body)、手をリズム良く動かして馬の目を指差します(using a rhythmic motion with your hands point toward the horse's eye)。 馬が肢を横に一歩踏み出そうとするまで(the horse tries to take a step to the side)、一つ一つの動作のエネルギーをどんどん高めていきます(put more energy in each motion)。

馬が動こうとした瞬間に馬を褒め(immediately reward the horse try)、動作を止めてリラックスして馬を撫でます(by stopping and standing relaxed and giving the horse a rub)。あなたからのほんの僅かな指示で、完璧な円を描けるようになるまで(until you can turn a complete circle from very little suggestion)、毎回、少しずつ要求を増やしてみましょう。 3回指示しても、リズム感のある動きに反応しない場合、馬が一歩動くまで、貴方の手で馬の頬を軽くたたいて動くように促す(bump the horse on the cheek with your hand)ことも必要です。 動いたらすぐに褒め、その後再開して、毎回、馬に前回より少し多く動くことを要求します。

後駆を動かすのも同じ原理を使います。 あなたのヘソが馬のお尻に向くように馬の側面に立ちます。リズム感のある指示を出して、後肢を交差させるように一歩踏み出させます。 同じ方法で、馬の真正面に立ち、あなたのヘソが馬の鼻に向くようにして、馬を後退させます。また、鞍を置く馬のキ甲部にヘソを向けるようにして、馬の真横に立ち、馬を横歩きさせてみましょう。 この調教には、あなたの体の位置が非常に重要で、馬は、その位置からあなたがどの部分を動かすよう要求しているのかを理解します。 こういう方法により、アット・リバティ(何の馬装具も着けない自由な状態)であろうとオンライン(無口頭絡と引手を付けた状態)であろうと、馬との意思疎通の基礎となるコンタクトとコミュニケーションの手段を構築できるのです。

無口頭絡や調馬索に慣れさせる(making the halter and lead friendly)

私たちが馬に初めて接する時、あなたの手の甲を嗅がせたように、ロープ(rope)、無口頭絡(halter)、調馬索(lead)等にも同じような方法で良く慣れさせることが必要です。 直ぐに無口頭絡を装着しようとするのではなく、その前に調馬索や無口頭絡を得心がゆくまで嗅げるように馬に対して差し出します。また、馬が完全に慣れるまで無口頭絡と調馬索を馬の全身にこすりつけます。 無口頭絡を正しく装着するために、あなたは馬の前方に向いて馬の左側の真横に立ちます。無口頭絡の上端を右手で掴み、鼻革の部分を左手で持ちます。

馬の頭を少しあなたの方に向けます。これは馬が指示に従った姿勢であり、馬が、突然、驚いて狂奔した時にも、これまでのように走って逃げたり、肩であなたにぶつかって来るようなことを防げます。 馬を最初からあなたに従順にしておけば、その日一日、馬とのコミュニケーションを良い状態に保つことができます。 優しく無口頭絡を滑らせて、無口頭絡の端を目の上を通って項にかけ、顎ひもを結びます。



無口頭絡と調馬索を着けた状態(オンライン)での扱いと鞍の馴致

前章で、私たちは正しい無口頭絡の装着方法を学んだので、無口頭絡と調馬索を着けたオンラインの状態で馬の調教を始めます。 私たちは、地上にあっても騎乗していても、まず、馬に無口頭絡と調馬索(lead)の感覚を覚えさせ、それに従順に従うことを教えることが必要不可欠です。 自分の馬の口が硬いと言う人にこれまで何度も出会いましたが、そのような馬は、地上で何かをする時、柔軟性に欠けて必ず扶助に抵抗するはずであると私は断言できます。 実際には、その馬の口が硬いのではなく、おそらく馬の体が硬いのです。もし、私たちが、その馬に無口頭絡と調馬索を着けて地上運動をさせて、無口頭絡と調馬索に対する柔らかい良好な反応を得られるならば、他のどのような状況においても、柔軟な反応を得ることができるでしょう。

調馬索を馬に教える時、少し、角度をつける

馬に調馬索を教える時、強制から馬を解放する時の素早さが最も重要な要素です。
馬の正面に立って、わずかに片側に寄り、調馬索により微妙なコンタクトの感触を保つくらいの強さに張ります。もし、抵抗を示した場合には、それ以上引張ると更なる抵抗を引き起こすだけなので、そのままの感触を維持することが必要です。 馬が譲るまでその感触を保ち(それは、わずか1インチくらいかもしれませんが)、譲った瞬間にすぐに解放します。 素早く解放しないと、正しいことをした褒美を得ることが出来なかったと馬が感じることになるので、タイミングが非常に重要です。

前に進めば調馬索から解放されると馬が理解するまで、毎回、少しずつ要求を増やしていきます。正面に真直ぐに立つのではなく、わずかに馬の横に出て立つことで、馬にとって学習が容易になるでしょう。 一度、馬が調馬索に従うことを学習すれば、あなたの周りを円で回らせたり、あなたと障害物の間を通ったり、障害を飛び越えたりさせることができます。この応用動作の形は無限に考えられます。

調馬索を使って、より良いコミュニケーションを取ることができ、感覚とタイミングの原理を応用して、馬のいろいろな部分を動かすことができます。 例えば、調馬索の先で輪を作り球節の周囲にかけるという方法を用いて、新馬の脚を持ち上げることができます。 また、馬の正面から横に4フィートくらい離れた所に立ち、調馬索を下げて、前肢を一本だけ横に動かすよう求めることで、馬の柔軟性とあなたのコミュニケーション技術のレベルを知ることができます。 後肢はできるだけ動かさずに、前肢を横に交差して周わり、左右両側に後肢旋回で円を描くことを要求できるところまでやってみましょう。 馬が感覚に従って反応するのを助けるために、感覚とタイミングの技術を使います。

私たちは騎乗している時、馬が脚や手による扶助に反応して動くようになって欲しいと思っています。騎乗する時の準備として、この訓練で私たちは馬にあらゆる部位への圧迫に反応することを教えます。 前駆を動かすには、馬の側面に立ち、あなたのヘソを馬の目に向けます。始める前に馬を撫で、姿勢を正し、身体にエネルギーを漲らせ、片方の手で無口頭絡の鼻革の横の部分を持ち、もう一方の手は馬の首に置きます。 そして、馬が横に一歩踏み出すまで、穏やかに鼻に圧力をかけていきます。馬が動こうとしたら、すぐにその褒美として圧迫を止め、リラックスした状態で立ち馬を撫でます。

軽い圧迫では馬が動こうとしない場合、一歩動くまで4段階に圧迫を増加させていく必要があります(これらの4つの段階は、「フェーズ」と呼ばれ、馬が互いにコミュニケーションをとる行動パターンの真似です)。 馬が反応したらすぐに褒めその後再開します。後肢を殆んど動かさずに前肢を横に動かして完全な円を描けるようになるまで、その都度、要求水準を高めていきます。 もし、あなたが高度の段階(フェーズ4)を使う必要があるような場合にも、その都度、軽い圧迫で反応するフェーズ1から繰返すことを忘れないで下さい。

この訓練では、貴方に近い側の肢をもう一方の肢の前に交差させ、そして肢を前ではなく横に踏み込ませてください。 この動きができることは、馬が精神的に従順な状態にあり、反抗的でないことを示しています。 後駆にも同じ原理を使います。あなたのヘソを馬のお尻に向けて馬の側面に立ちます。引手を使い、馬に鼻先を僅かにあなたの方へ向けるように要求します。 馬が横に踏み出すまで、もう一方の手で初めは脾腹に軽い圧迫を与えます。あなたに近い方の後肢は、もう一方の後肢の正面に踏み込まなくてはなりません。 この訓練では、前肢は最小限しか動かさず、後肢が円を描く必要があります(前肢旋回)。 この圧迫(フェーズ)を上げていく方法を使って、馬の体の殆んど全ての部分を動かすように教えることができます。鼻か胸を押して後退させたり、脚を上げたり、横歩きさせたり、頭を下げさせることはほんの一例です。

鞍の馴致

鞍を最初に馴致する場合、貴方が馬と遊んでいる場所の近くの地面に鞍を置いておくことから始めましょう。しばらく馬を動き回わらせ、鞍の近くに立たせて休ませましょう。これを何度か繰り返せば、鞍の置いてある場所を、馬が休息するための心地良い場所として探すようになるのにそう長くはかからないでしょう。

馬に鞍下ゼッケンを馴致するには、馬が立ったままで、リズミカルに鞍下ゼッケンを背中に投げ上げたり下ろしたりして、馬が完全にリラックスした状態で受入れるようになるまで繰り返します。この動作を両側から確実にできるようにします。 その後、引手を持ち、馬の頭を僅かにあなたの方へ向かせ、馬の側面に肩の位置で立ち、鞍を背中に乗せます。馬の反対側からもこれをできるようにします。

腹帯を締める時、馬に近い方の腕を伸ばすことを忘れないで下さい。反対の手で腹帯を締めると危険な場所に立たなくてはならなくなるので、これが最も安全な方法です。 腹帯は、馬に自分の周囲を速足で走らさせることができる段階になってから、しっかり締めるようにします。これにより馬は腹帯を締められることに過敏にならず、肢を伸ばして筋肉や腱に無理がかかり痛めるようなことを防ぐことができます。

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