トップ  恋は青空の下  ワイオミングの緑草  The Man from Snowy River

北海道芽室町で日本純血アラブ馬協会を主宰する旋丸巴
さんが『馬映画100選』を出版しました。[2004/9/17記]


「馬がでる映画を見たい」という思いはけっこう持っていますよね。『2年以上かけ、100選の他にも日本で見られる馬映画の殆どを網羅いたしましたし登場馬についても解説をつけ写真も添付いたしました。』とのことです。お待ちかねの本といったところですね。

The Man from Snowy Riverは、ちびどんぐりさんがオースオトラリアのシャロンの元で研修していたとき、是非見て!とお薦めの映画です。続編もありますよ。

■史上初、馬映画がこの1冊に集うこだわりの馬映画100選
一時期の競馬ブームを経て、今や馬を愛する人々も、競馬、乗馬から耐久競 技、流鏑馬に至るまで多様化が進んでいます。また、馬に直接触れる機会や 時間的余裕のない「潜在的馬ファン」も、相当数存在するものと思われます。 それら全ての馬ファンが、都市に居ながらにして簡便に馬と接することが出来 るメディアが、馬映画です。 本書では、そうした馬映画の中でも、芸術的に優れた作品は勿論、馬に関す る重要な場面を有する作品までを網羅し、解説、情報提供する書籍です。 お値段:\1900

■主な内容
馬が主役、或いは重要な役を担う「馬映画」の中でも、優秀な作品100 作を「競馬」「馬券」「乗馬」「西部劇・ロデオ」などの分野別に紹介すると 共に、登場する馬についての解説、品種の説明などを併せて紹介する。

■出版社名 源草社(げんそうしゃ)
TEL 03-5215-1639 FAX 03-5215-1739
E-mail:
gensosha@infoseek.jp

下記取り扱い書店(下記は一部。他書店にも配布されます)ですが、
近くの書店でも取り寄せは可能です。2004年9月27日 全国書店にて発売

東京:書泉グランデ、三省堂(神保町)、山下書店(後楽園)、紀伊国屋本店、
    紀伊国屋南店(新宿)
大阪:旭屋、ジュンク堂(本店、難波店)、丸善、紀伊国屋
札幌:丸善、旭屋、紀伊国屋
京都:丸善、旭屋、ジュンク堂

『恋は青空の下』・『ワイオミングの緑草』の2作品を紹介します。

馬映画100選(7)「恋は青空の下」

[1950年/アメリカ 監督/フランク・キャプラ]
出演/ビング・クロスビー コリーン・グレイ
     レイモンド・ウォルバーン

『ケンタッキーダービーに愛馬を出走さるへく奮闘する
男をビング・クロスビーが好演した競馬映画』

本作は、フランク・キャプラ監督が自作『其の夜の真心』(34年)を、16年の月日を経て自らリメイクした作品なのだが、 これが話の筋からカメラアングルまで、前作そっくり。競馬シーンなんか『其の……』のフィルムをそのまま流用しちゃって て、こんなことなら作り直す必要なんてないんじゃないかと思えるほど。だから、ストーリーなどについては『其の……』の 欄を参照いただくことにして……しかし、前作にしろ本作にしろ、これほど競馬についてアメリカらしさが充全に発揮されて いた映画って、ちょっとほかに見当たらないんじゃないだろうか。いや、私はアメリカの競馬映画を全て観た訳じゃないから 偉そうなことは言えないが、少なくとも私が観た競馬映画の中では、この2作品ほどアメリカ競馬を象徴する映画はなかった。

先ず第一に、馬と動物の絡みがあること、これが実にアメリカ的。ヨーロッパでも世紀の名牝馬キンツェムと猫の逸話に 代表されるように、厩舎で動物を飼う習慣がない訳ではない。けれど、日常的に厩舎で動物を飼い、 それが競走馬の親友的 存在として確立した地位を保っているのは、やっぱりアメリカである。アメリカの厩舎で飼われている動物の代表は何と 言っても山羊で、『ギャンブルブラザーズ』という作品にも山羊が当然のような顔をして厩舎の場面に登場する。 気をつけて見ているとアメリカ映画の競馬場シーンには、その隅っこにしばしば山羊が登場する。他にも兎、猫、犬など、 アメリカ競馬界を住家としている動物はたくさんいるけれど、『其の……』と本作では鶏が、名馬ブロードウェイビルの 親友として活躍。馬の背や頭にチョコナンと止っている鶏の姿と、それを許している馬の姿は、実にハートウォーミング である。

アメリカ的である第2は、「馬のお墓」が登場すること。世界にアメリカ人ほど馬のお墓を作りたがる国民はいない。 その証拠に、ヨーロッパでは馬のお墓など滅多に見掛けないが、アメリカでは、名馬と言われる馬のほとんどが大きな お墓の下で眠っている。 『其の……』と本作にも馬のお墓は現れるが、それが競馬場の内馬場にあるのだから誠にアメリカ的。 競馬場で半旗を掲げて名馬を埋葬するシーンは、ベルモントパークに埋葬された名馬ラフィアンを連想させる。 アメリカ競馬界を象徴すると言えば、本作の主役がビング・クロスビーというのも、アメリカ的と言えば余りにもアメリカ的である。ご承知の方も多いかと思うが、クロスビーは無類の競馬好き。競馬を愛するあまり、デルマー競馬場のオーナーになってしまったくらいである。クロスビーが死んでしまった今は、どうなのか知らないけれど、彼の生前、デルマー競馬場では国歌の代わりにクロスビーの歌が流れていたそうである。

クロスビーと言えば、前作『其の……』を踏襲したところが多い本作が、しかし、前作とは大きく違っているのが、 このクロスビーを主人公=ダン役に配した点である。前作では、苦みばしった美男子ワーナー・バクスターが主人公=ダンを「だらしない競馬好き」として演じたが、本作では「誠実」「善人」というイメージがぴったりのクロスビーが、心優しい競馬好きとしてダンを演じている。 フランク・キャプラは『或る夜の出来事』でアカデミー作品賞、監督賞など6部門を制覇した名監督で、もう一つの代表作 『スミス都へ行く』などでは、善良な市民の正義を堂々と謳い上げた監督でもある。それだけに、彼の作品群は、 常に正義に溢れて……溢れ過ぎて、私などには、ちょっと胸やけがするほど。

本作も、だから、前作から、 ますます理想主義キャプラらしい映画に作り替えられてしまったのだろう。要所要所で、クロスビーが甘い歌なんか歌って、 映画全体もミュージカル色が濃くなってしまった。 また、前作では人間模様を描くこともテーマのひとつであったのに、本作では、そうした細々とした人間描写は バッサリと刈り込まれて、全体をテンポアップ。「映画監督の犯す7つの大罪の一つは、観客を退屈させることである」と豪語したキャプラだけに、リメイクされた本作は、スピード勝負の現代アメリカ映画にも負けないほど、軽快で、作中にグイグイ引き込むパワーに溢れている。

そんな本作と前作。どちらが良いか、それは個人の好み以外に判断基準はないけれど、私の好みは、と言えば……。 断然、前作! 善良で真面目、律義者の本作のビング・クロスビー版ダンより、前作『其の……』の少しばかり影のある ワーナー・バクスター版ダン方が、断然、リアルで好きである。競馬好きなんて、ちょっとひねくれていて、 ちょっとヤクザで、だからこそ愛すべき人種なんだということを、分かってないんだよねぇ、大監督キャプラさんは。

[登場馬メモ] サラブレッド
前作『其の夜の真心』そっくりの本作、とは前述の通りだけれど、馬も、また、前作と瓜二つ……というより、 割らずそのまんま、というほど似ている。前作、本作ともにモノクロだから、毛色については詳細は分からないけれど、 色調や額の流星の形などは、全く同じ。のみならず、体型や顔付きが実によく似ているのである。大柄で、筋肉質で、 後躯の発達が良くて……。おまけに、背が少し凹んでいて、いうところの「背っ垂れ」体型であるところまで同じなのである。

ここまで似ていると、前作で使った馬に、もう一度、この役を配役したのかしら? と思いたくなる。勿論、しかし、 よく考えれば、いや、考えるまでもなく、前作から本作まで16年という時間が流れていて、馬という短命な動物に、 この年月を越えて同じ役が勤まる訳はない。つまり、良く似た体型と毛色の馬を連れて来て、額の流星だけを染料で 修正したのだろうが、それにしても似ているんですよ、ほんと。

馬映画100選(46)「ワイオミングの緑草」

[1948年/アメリカ  監督/ルイス・キング]
出演/ペギー・カミングス  チャールズ・コバーン

『純白の野生馬が活躍。後半は繋駕レースで盛り上がる明るいアメリカ映画』

本作を西部劇とすべきか、それとも繋駕競走とすべきか、随分、迷った。というのも、前半は紛れもないワイルド・ホース物で、牧場を逃げ出して野生馬のボスとなった白馬サンダーヘッドが、人間に飼われている牝馬クラウンジュエルをさらって行く物語。この牝馬が、しかし、牧場に連れ戻され、牝馬に恋したサンダーヘッドまでが飼い馬に戻る、という展開である。そして、後半は、このクラウンジュエルが度重なるトラブルを克服し繋駕の大レースに臨む、というお話。  前半と後半、物語が大きく変わってしまう、というのは我が最愛の『ワイルド・ブラック』と同様で、本作も『ブラック……』ほどではないにしろ、私のお気に入りの一作。というのも、この映画、おおっ、と思わず知らず声をあげてしまう秀逸な馬のシーンが次々に飛び出すからである。

まずは、サンダーヘッドがクラウンジュエルを連れ出すシーン。夜の牧場に忍び寄って牝馬の囲いの柵を飛び越えて入り、また、飛び出ては、「こっちにおいでよ」と誘うシーンなどは、闇夜に浮かびあがるサンダーヘッドの白い馬体が絵画のように美しいし、そのしぐさもチャーミングである。 いや、しかし、チャーミングと言えば、全編を通して、この白馬の演技が誠にチャーミング。クラウンジュエルと2頭で寄り添って人間から隠れるシーンや、彼女の耳元に何やら囁きかけたり、或いは、じっとりした流し目を送ったり……。 

そんなロマンティックな演技をやってのけたかと思えば、今度は、谷を飛び越したり、オオカミの群と戦ったりと、硬派なシーンだって堂々とこなして、素晴しいの一言に尽きる。 本作の魅力の8割がたが、サンダーヘッドの名演技に由来する、と言って、誰も反対する人はいないだろう。CGがなかった当時、こういう馬の演技の裏には大変な労苦と優れた調教技術があったのだと容易に想像がつくのだけれど、それだけに安直なCGで人間的に合成された表情の動物なんかでは絶対に醸し出せない現実感と感動を与えてくれる。

なんて能書きはともかく、競馬ファンなら、後半の繋駕競走のシーンに胸踊らせること必至。ご案内の通り繋駕は2輪馬車をひくトロットレースのこと。現在でも欧米では盛んに行われているけれど、ここに登場する繋駕競走は、「ヒート競走」と言って、同じ馬が2度勝つまで勝負する方式。だから、クラウンジュエルも、ライバル馬と1勝1敗の後、第3戦目で決着をつけることとなって、さて、本作クライマックスシーンである最終戦の結果やいかに。 と、物語を紹介しているだけでワクワクしてしまうのだが、 実は、本作は『My Friend Flicka』『高原の白馬』に続くシリーズ第3作なのである。

第1作『My Friend ……』は同名ベストセラー小説を43年に映画化したもの。45年には続編『高原の白馬』が作られ、そして本作へと続いた、と、これは資料に記されていたことで、第1作などは日本では劇場公開もされていないから詳細は分からないのだけれど、この後、59年からTVドラマシリーズとしてアメリカで放映され、こちらは日本でも『名馬フリッカ』のタイトルで60年から放映。02年にはCS衛星放送で40年振りに再放送されたから、ご存知の方も多いだろう。本作『ワイオミング……』にもフリッカやフリッカの飼い主であるケンも登場するから、TVで『名馬フリッカ』を見た方にも興味のつきない作品である。 アカデミー撮影賞候補にもなった美しい映像と言い、いくつもの楽しみを内包した本作。でも、やっぱり一番の見所はサンダーヘッドの名演技ですけどね。

[登場馬メモ] アメリカン・トロッター ムスタング?
名馬サンダーヘッドのハートを射止めた牝馬クラウンジュエルは青光する美形馬。なるほど、主人公ケンが衝動買いしてしまったのも、また、サンダーヘッドが恋したのも納得という名馬なのだが、繋駕レースで健脚を発揮しているように、彼女はトロッター。細身の体型から繰り出されるフットワークはあくまでも軽く、これぞトロッターというトロッター。 と、クラウンジュエルの品種は判然して、しかし、肝心のサンダーヘッドは、というと、これが分からない。アメリカに馬術留学した知人が「これってホワイトホースでしょ」といったけれど、どんなに資料を探し回ってもホワイトホースなる品種は見つけられなかった。どなたかご存知?

馬映画100選 「現金に体を張れ」
鬼才キューブリック監督の処女作にして競馬場強盗を扱ったサスペンス映画の傑作。
その他「ハネムーンは巴里の競馬場」
この本は、私が会社員 時代に主人と歩いた各国競馬場旅行記。
「ハネムーンは巴里の競馬場」は、結婚式を挙げたパリに始まり、香港、 イギリス、韓国、オーストラリアと、競馬場のみならず、馬のいるところなら、どこにでも出かけた珍道中記。 発行から十年を経ていますが、今も絶版にならず生き残っている珍しい本です。 拙著には「馬をめぐる冒険」(ぶんか社)、「ロンドンの馬、パリの馬」などがありますが、いずれも 絶版、あるいは品切れで、図書館に行くか、古本として探していただくしかありません。

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