●エンデュランス  ●トップへ

ボブ・サンプル氏特別講演
平成11(1999)年9月 北海道鹿追町にて


ボブ・サンプル(George Robert Sample)氏
オーストラリアでエンデュランス競技に参加している選手の中で最も成功している1人である。彼は、トム・クィルティ・ゴールド・カップを獲得しており、重量級で4回チャンピオンを取っている。ボブは、クィルティを完走したことを示すバックルを14個持っているが、10個以上持っている人は数人しかいない。
彼のSHARAHD ENDURANCE STUDで繁殖された馬は、オーストラリアと海外の競技会で素晴らしい業績を上げている。ボブは、29年間、馬の繁殖、トレーニング、そして乗馬にかかわっている。

勝つためには、まずレースを完走しなければならない
エンデュランス競技は、最初にゴールインする者が必ずしも勝利者であるというわけではないので、他のレース競技と比べて全く異なる。この競技において、コースを完走する馬は獣医検査にパスし、完走したことを宣言されなければならない。この条件は、エンデュランス馬の健康の保護を目的としている。すなわち、エンデュランスライダーは普段の経験から、ストレスレベルの的確な判断を習得し活用しなければならない。1日に160kmまでの長距離を走る競技は馬にストレスを与える。彼らの心拍数は上がり、体温は高くなり、呼吸は速まり、脱水症状をおこす。獣医委員会に求められる情報は、ストレスの程度と、どれくらい早く馬がストレスから回復するかを示す。エンデュランス競技中、又はゴールした後でさえも、全ての獣医検査で獣医委員会はそれぞれの馬が走り続けることができるかを決める。競技の最後に完走したことを宣言されるには、馬がハ行していないこととストレスから良く回復していることを獣医委員会に認められなければならない。ハ行の為、失権になるライダーもいるだろう。また、停止後、馬の代謝状態に回復が見られず失権する者もいるだろう。どのライダーも、競技の間もしくは競技終了後に馬が獣医委員会によって失格にならないことを願うだろう。これを防ぐには、ライダーは競技中のエンデュランス馬の能力に影響する基本要素を理解しなければならない。

(1)遺伝的能力
(2)馬の成熟度
(3)馬体調整
(4)乗馬戦術
(5)コース
(6)天候

(1)遺伝的能力
馬の遺伝的要素は変化しない要素である。競技会の間、チェックし覚えていなければならない。並外れた心臓と肺の容量を持つ馬もいるだろう。彼らはエンデュランスに必要な有酸素運動(酸素摂取)において優れているだろう。または歩様に関して優れた運動能力を持っているだろう。彼らは、たいていの馬よりも少ない努力で速く進むことができる。長距離騎乗に対して優れた性格を持っている馬もいるだろう。彼らは容易に訓練でき、競技を楽しむ。これらは馬を購入する時に査定されるべき要素である。それらは、競技の間に考慮すべき点である。
(2)馬の成熟度
エンデュランス馬は、11〜12歳まで発達し続け、能力が向上する。彼らが5歳で協議を始める時にも同じことが言える。エンデュランス馬の能力を最大限に発達させることは時間を要する。しかしながら、成熟に達してから少なくとも、もう5年はその能力を維持する。最も高いレベルで国際的なイベントで競技している最高のエンデュランス馬の多くは14歳以上である。彼らは成熟した競技馬であり、エンデュランス競技によるストレスを問題としない。エンデュランス競技の間、あなたんの馬の成熟度について考慮しなければならない。
(3)馬体調整
馬体検査は我々が最もコントロールできる要素である。何ヶ月にもわたる訓練計画は馬体調整を決定する。馬体調整のために、トレーニングにおいて競技で走行する距離をフルに乗ることは必要ではない。必要なのはトレーニング中に、あなたの馬をストレス下に置き、更なるストレスを与える前に回復させることがより重要である。これはインターバルトレーニングと呼ばれるスポーツマンが行う技術と同じである。ストレスは上がり坂での騎乗と速度の早い有酸素運動で訓練することができる。一つの重要な原則は、エンデュランス競技でトレーニイグの最も速いスピードを上回るスピードで走らないことである。ライダーは必要な速度でトレーニングすることにより、競技で馬を速く走れる様にしなければならない。馬がトレーニングにおいて高いレベルに達した時に、オーバーワークに陥りやすいことを認識しておく必要がある。オーバーワークになると競技能力は低くなる。これを判断する能力は経験と獣医のアドバイスにより備わる。
(4)乗馬戦術
優れたエンデュランスライダーは競技中、馬のエネルギーを均一に出させようとする。これをするには経験と的確な判断が必要である。いくつかの原則は重要である。最も重要なのは、彼らが同じスピードで走った場合、平地を走るよりも上がり坂の方が力を必要とする。エンデュランス競技において、コースの上がり坂でスピードを遅くすることはとても重要である。競技のはじめの方では馬が元気で、上がり坂を競争したがるのでこれは非常に難しい。競技中、均一にエネルギーを使って走っていた馬は余力で最後に競り合うこともできる。ライダーは、馬の体温が上がり、汗をかいてストレス状態になっているのに気づいたら、回復させるために少なくとも数分はスピードを落とさなければならない。成功を収めるエンデュランスライダーは、馬が快適に走るスピードの判断において優れた技量を発揮している。
(5)コース
エンデュランス競技のコースは平らな砂漠から険しい山まで様々である。ライダーはそれぞれ馬の能力にあわせてコースを判断しなければならない。コースの知識は乗馬戦術を決めるのに役立つ。エンデュランス競技の間、時間を無駄にしないことは重要である。馬にとって簡単な所は速く走り、難しい所はペースを落とすべきである。
(6)天候
エンデュランスライダーは、競技中の高い気温と高い湿度が馬に与える影響を知らなければならない。暑くてひどく湿度のある日は、競技で馬が走るスピ^ドを抑える必要がある。その影響を知らなければ、馬はすぐに高い体温と異常な汗をかくといった代謝の問題を引き起こす。天候が非常に涼しく、湿度が低ければ、馬はいつもより速い速度で走り、ストレスの回復も速い。
●結び
エンデュランスライダーは、競技中において考慮すべきたくさんの要素を持っている。判断は競技中をとおしてなされる。ライダーが良い判断ができるように経験を積む時、保守的かつ慎重になるべきである。これを守ることによって、馬は競技を続けることができる。ライダーは獣医委員会から失権を言い渡されないだろう。「勝つ為には、まずレースを完走しなければならない」ということを覚えておいてください。

●ボブ・サンプル氏の「SHARAHD ENDURANCE STUD」をベースにしたライディングツアーがありました。
Australia - Queensland Riding Tours [The Conondale Trek]  http://bcranches.com/australia/
[Riding Tours in Australia]のホームページがでたら [Conondale Range] をクリックしてください。

●エンデュランス  ●トップへ